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EBとは?

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表皮水疱症( EB/Epidermolysis Bullosa)

1.表皮水疱症とはどんな病気ですか

表皮水疱症は、日常生活でのちょっとした刺激や摩擦により、全身の皮膚や粘膜に水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)を繰り返す、遺伝性の皮膚難病です。 本来、皮膚は、外界に接する側から順に、表皮、真皮および皮下組織の3層から成り立っています。そして表皮と真皮の間には、基底膜と呼ばれる強靭なタンパク遺伝子が存在し、表皮の一番下層にある基底細胞がこの基底膜と鋲でとめられていて、簡単に皮膚が破られない構造になっています。この強靭な皮膚の構造こそ、体の臓器が守られ、雑菌や細菌等の外敵を遮断し、体温や水分を保持する、まさに高機能シェルターである所以です。 ところが表皮水疱症の場合、その皮膚の構造成分であるタンパク遺伝子に変異があるため、本来の役目が果たせなくなっているのです。たとえば、赤ちゃんを抱き上げる、手をつかむ、硬いものにぶつかる、寝返りをうつなど、ほんのわずかの刺激でも水疱やびらんとなって皮膚に繰り返しダメージを与えてしまいます。 今現在、治る治療法はありません。全身のいたるところに発症する水疱を潰し、剥けた皮膚に被覆材(ガーゼ)交換することを、毎日一生繰り返します。重症の場合、手や足の指が癒着する棍棒化、固いものが飲み込めない食道狭窄、感染症や皮膚ガンの発症リスクも高まります。表皮水疱症は、苦痛の多い難病であると同時に、日常生活の困難を伴う障害者でもあります。 昭和62年に特定疾患(接合部型と栄養障害型のみ)に認定されましたが、平成27(2015)年に新しく制度化された難病医療法により重症度診断基準の見直しとともに病型を問わず指定難病に。日常生活への著しい障害程度が長期にわたり、かつ高額な医療費負担が認められると、受給者証がなくても医療費助成が受けられるようになりました。 欧米では、表皮水疱症(英語名:EB=Epidermolysis Bullosa)のことを、皮膚のもろさを蝶の羽に例え、バタフライ・チルドレン(Butterfly Children=触れると壊れる子供達)として理解され、蝶々のモチーフが、国際研究支援組織DEBRAのシンボルマークとして、DEBRA(デブラ) International(本部ウィーン)グループや支援団体などでEB Awareness活動等に使用されています。 DebRA Japanは、発足の翌年2008年にDEBRAに加盟しています。

 

2.どんな病型か、その診断は必要ですか

通常、臨床所見や皮膚症状から表皮水疱症の可能性を判断され、その後、電顕所見等による水疱形成部位、さらに構造成分のタンパク遺伝子の変異などから以下の4型に大別されます。

(1)単純型 EBS 32%
(2)接合部型 JEB 7%
(3)栄養障害型 DEB (優性21%・劣性33%)
(4)キンドラー症候群   7%

 

新国際診断基準 Fineetal. JAm Acad Dermatol(2008)から引用

表1)(新国際診断基準 Fineetal. JAm Acad Dermatol(2008)から引用)

表1)(新国際診断基準 Fineetal. JAm Acad Dermatol(2008)から引用)

 

表皮水疱症の疑いがあると見なされた時は、早期に治療方針を立て、適切なケア処置指導、予後の見通しなどを行うため、専門医のいる大学病院で、病型の確定診断が必要です。

・臨床所見 家族の遺伝形式や皮膚の症状に基づき推定される鑑別診断
・電子顕微鏡検査 通常の60万倍まで拡大して皮膚構造を精密に解析
・免疫組織学的検査 皮膚を蛍光抗体法で調べ異常のあるタンパク分子を同定する検査
・遺伝子検査 適切な治療法や合併症などの対応が可能 遺伝子検査は、子どもの年齢が3?5歳に達し、症状が見極められるのを待ってから鑑別診断を行うことがあります。
・出生前診断 胎児の染色体や遺伝子の異常を診断可能

 

3.遺伝しますか

表皮水疱症は皮膚組織を構成するタンパク遺伝子の変異で生じる遺伝性の皮膚疾患です。そのため、接触や空気で感染はしませんが、遺伝することはあります。 病型によって、以下のように遺伝形式が決まっているので、正確な病型診断を行うことによって、次のお子さんを希望される場合や、結婚して子どもを希望される場合など、表皮水疱症を発症することが推測されます。とくに、家系内に表皮水疱症の発症した人がいる場合、遺伝の心配や不安と同時に、自分と家族のあり方などにも配慮が必要となります。 遺伝については、主治医や遺伝カウンセラーに相談してみてください。 優性遺伝性の場合(単純型と優性栄養障害型)

父と母からそれぞれ受け継いだ2つの遺伝子のうち、どちらか片方に異常があると発症 する遺伝形式で、患者の子が同じ疾患を発症する確率は50%です 劣性遺伝性の場合(接合部型と劣性栄養障害型、キンドラー症候群) 父と母からそれぞれ受け継いだ2つの遺伝子のうち両方に異常があると発症する遺伝 形式です。性染色体の異常はその限りではありません。子が発症する確率は25%です。  

4.患者数はどのくらいですか

国内の推定患者数は500~640人(1994年厚生省稀少難治性皮膚疾患調査研究班の全国調査による)。国別、男女別の違いはとくにありません。

 

ただし、この数字は特定疾患医療受給者証(単純型を除く)を申請して支給された件数のため、皮膚科専門医によると、軽症例も含め1,000?2,000人と推定されています。 なお、2015年1月1日より難病医療法が施行されて以降、その重症度診断と、長期にわたる高額医療費が認められた表皮水疱症は、病型を問わずに、「特定医療費(指定難病)受給者証」が受けられるようになっているので、患者数は確実に増えると思われます。

 

5.どんな症状がありますか

 

主に、手足の指や関節部など刺激を受けやすい部位に、わずかな外力ですら簡単に水疱やびらんを生じます。水疱・びらん自体は、比較的速やかに治癒し、治癒後、瘢痕も皮膚萎縮も残さない場合と、難治性で治癒後に瘢痕を残す場合もあります。 合併症としては、皮膚悪性腫瘍、食道狭窄、幽門狭窄、栄養不良、貧血(主に鉄欠乏性)、関節拘縮、成長発育遅延などがあり、とくに重症型において問題が多くなります。

 

6.どのような治療法がありますか

現在、根治する治療法はありません。その時々の症状を軽減する対症療法が中心で、生涯にわたり繰り返していく必要があります。出来るだけ物理的刺激を避け、温暖を避け、水疱処置と創傷処置は毎日行い、時に軟膏外用、抗生物質投与、栄養管理などを行います。

 

水疱処置

水疱が出来て、そのまま放っておくと、どんどん膨らんでしまいます。速やかに滅菌済注射針など(穿刺器具は保険収載)で蓋に穴を数カ所開けて、内溶液を抜き出します。その時、水疱の蓋(皮膜)を壊さないように周縁から穴を開けて潰してください。水疱の蓋がそのまま傷を治す被覆代わりになります。

 

創傷処置

皮膚が剥けた箇所は、汚れや血液などがあれば、軽く泡立て水道水で十分に洗い流します。その際、人間の体液とほぼ同じ塩分濃度0.9%の生理食塩水(保険収載)を使うと沁みて痛がることが軽減されます。傷に異変(化膿、痛み、発赤、臭い、緑色など)がなければ、特に軟膏剤は使わず、創傷被覆材を貼付します。

 

創傷被覆材

以前は、軟膏剤を塗布したガーゼを使っていましたが、傷が乾燥してガーゼ交換をする際に痛みを生じ、また新しく再生した皮膚を剥がしてしまうことから治りにくく、浸出液がもれやすい、何より全て自費購入など、深刻な問題がありました。 2010(平成22)年の診療報酬改定で表皮水疱症患者に限って、在宅用の医療材料等が保険収載となって以降、創傷被覆材=ドレッシング材(特定保険医療材料)が保険算定で使用できるようになりました。 創傷被覆材は、症状に合わせ適切なものを使う必要がある一方、病院によって取り扱っていない製品もあります。詳しくは、主治医に相談するか、友の会までご連絡ください。

 

合併症

症状に応じて、抗生物質軟膏を使用する場合は、長期間にわたる使用により耐性菌(抗生物質に対する抵抗性をもった菌)の出現の原因となりますので、注意が必要です。 びらんや潰瘍の悪化が認められた場合は、真菌や細菌感染の合併症や皮膚がん出現などの可能性があります。普段と違う症状に気づいたら、早めにかかりつけ医か専門医に受診するようにしてください。

 

痒み対策

かゆみが強い場合には、かゆい部分に冷やしたタオルや保冷剤などを当てると和らぎます。症状をとる目的で止痒剤(かゆみ止め)を使用することもあります。小さい子供が寝ていて無意識に掻き毟らないように、とくに寝ているときだけ両手や両足をミトンでくるむと、皮膚へのダメージを防げます。

 

歯と目のケア

口腔内の粘膜も傷つきやすく、また歯の形成不全もおきやすいので、生後6ヶ月頃から定期的な歯科検診を受け、痛くない口腔ケアの方法を習慣づけるようにします。虫歯になると、口が大きく開かない開口障害から治療が難しいため、予防対策は早めが必要です。 また、瞼と眼球が癒着したり、角膜も傷つきやすいことがあります。紫外線にあたらない、目薬や目の軟膏剤を塗布するなど、眼科の定期的な受診も行うと安心です。

 

外科治療

外科治療では、指の分離、食道狭窄の拡張術、皮膚ガンの切除と皮膚移植などで行われます。麻酔管理や点滴(翼状針)・心電図などのテープ固定、血圧計や駆血帯などの保持、体位移動、アルコール消毒、皮膚へのテンションのかけ方など、皮膚にダメージを与えない配慮を事前に、医師や看護師、麻酔医などに説明しておく必要があります。

 

栄養管理

栄養摂取が十分できない場合、貧血や倦怠感がひどくなった場合などは、保険収載となる栄養補助食品「エンシュアリキッド」「エンシュアリキッドH」「エポーネ」等栄養ドリンク剤の飲用か、点滴や経鼻にて経管投与することがあります。

 

7.治療研究

最新の事例として、栄養障害型患者への骨髄移植を行い皮疹の改善を認めたという報告がアメリカや欧州で報告されています。 日本でも、大阪大学の玉井克人教授のもと、骨髄間葉系幹細胞移植の治験がすでに行われており、臨床への期待が高まっています。また、欠損している7型コラーゲンを用いたタンパク補充療法や細胞投与療法、火傷の患者にはすでに保険適用で使われている自家培養表皮、将来的にはiPS細胞を使った遺伝子治療も期待が高まっています。

 

8. 予後

日常生活にほとんど支障のない軽症なケースから、生後間もなく死に至る重症型、同じ重症型でも、特別な医療的ケアや福祉サービス、介助や配慮などを必要として日常生活を送るケース、普通の学校に入学し、普通に進学し、就職して社会生活を送り、結婚や出産もできるケースなど、その症状には個人差が目立つことが少なくありません。 家族や兄弟姉妹の理解と協力も大切ですが、何より、自身で自分の病気と向き合い、正確な病型診断のもと、早くから適切な治療ケアと栄養管理を実現することで、障害があっても、前向きに人生を楽しむ仲間が数多くいます。 とくに、接合部型と劣性栄養障害型では、10代でも有棘細胞癌などの皮膚がんを併発することが多く、予後を左右することがありますので、定期的な通院と受診を通して、 生涯にわたって医療者とのより良いパートナーシップを持つことをお勧めします。

 

9.表皮水疱症の重症度診断基準

重症度判定基準
軽 症 3 点以下
中等症 4~7 点
重 症 8 点以上

新しい難病の診断基準によって、表皮水疱症のどの病型であっても、日常生活に支障がともなう程度によって医療費助成が受けられます。加えて、症状の程度が下記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であっても、高額な医療を継続することが必要な者(特定保険医療材料等の利用など)については、医療費助成の対象とみなされます。 重症度判定スコア表

注1)診断基準および重症度分類の適応における留意事項 ①

表皮水疱症の診断を得た上で、以下の事項が明らかであれば上記の点数に関係なく重症と認定する。

  1. ヘルリッツ型表皮水疱症の確定診断がついている場合 (ラミニン 5 蛋白の完全欠損、または同遺伝子の蛋白完全欠損型変異を証明)
  2. 家族(2親等以内)にヘルリッツ型表皮水疱症の罹患者がいる場合
  3. 幽門閉鎖を合併する場合?
  4. 筋ジストロフィー合併型の確定診断がついている場合 (プレクチン蛋白の完全欠損または同遺伝子の蛋白完全欠損型変異を証明)
  5. 家族(2親等以内)に筋ジストロフィー合併型表皮水疱症の罹患者がいる場合
  6. 重症劣性栄養障害型の確定診断がついている場合 (VII 型コラーゲン蛋白の完全欠損または同遺伝子の完全欠損型変異を証明)
  7. 家族(2親等以内)に重症劣性栄養障害型表皮水疱症の罹患者がいる場合
  8. 有棘細胞癌の合併またはその既往がある場合

 

注2)診断基準および重症度分類の適応における留意事項 ②
  1. 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合 には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る)。
  2. 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
  3. 症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする。

 

注3)小児慢性特定疾病事業における診断基準

常に水疱びらんがあり、在宅処置として創傷被覆材(特定保険医療材料)を使用する必要のある場合

 

<参考資料>
  • 厚生労働省 難病対策について(健康局 疾病対策課)
  • 日本皮膚科学会 表皮水疱症 Q&A
  • 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班
  • 難病情報センター(公益財団法人難病医学研究財団)表皮水疱症
  • 小児慢性特定疾病情報センター 表皮水疱症

 

<関連リンク>